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物件紹介
2024.04.01

SE構法施工物件紹介[住宅 22]

堺M邸

SE構法のポテンシャルを最大限に引き出して実現した
天井高4.5mのLDK。

旗竿敷地という高密度な都市空間にいかに快適な家をつくり得るか。
4.5mの天井高を持つLDKは、設計者の自邸ならではの思い切ったチャレンジの積み重ねによって生まれた。

堺M邸は、大阪府堺市西区の住宅地に建つ。今回は、施主であり設計者でもあるアドヴァンスアーキテクツ株式会社の三木さんにお話をうかがった。

旗竿敷地に挑戦する

南海本線の諏訪ノ森駅を降り、海側に数分歩くと堺M邸の前に至る。70坪ほどの南北に長い土地をふたつに分割した北側の旗竿敷地に建つ。 この辺りはもともと海辺の別荘地として開発されたそうで、趣のある諏訪ノ森駅の駅舎は往時を偲ばせる。1907年竣工で現在は有形登録文化財である。当時の区画を保持している家がわずかながらあるが、すでに大半が分割再分譲されているようで、堺M邸の敷地はそうした土地がさらに分割された、いわば3代目にあたる。

なぜ手前のより整形の土地を買わなかったのか尋ねると、そもそもこの土地はアドヴァンスアーキテクツ株式会社の不動産部門が取得し、それを三木さんが買ったものなので、万が一にも条件の悪いほうが売れ残るようではいけない。そこで、あえて旗竿敷地のほうを購入し、設計者としてその悪条件にチャレンジすることになった。

竿の活かし方

アプローチとなる竿の部分は幅が約3.4m、奥行きは約15mと、かなり長い。車2台を縦列駐車しても建物の手前に庭をつくるだけのスペースが取れる。三木さんはそこに樹木を植えて緑化し、リビングから眺める小さな庭を設えた。駐車場との間には視線を受け止めるための壁も設けた。このリビングと庭の位置関係が、実は1階のプランニングをほぼ決めている。

リビングからの庭の眺めを大事にするために、玄関はアプローチから左手に折れたところに設けている。玄関を入ると、天井を低く抑えた吹き放ちの廊下のような空間を経て、天井高4.5mのLDKに至る。かつてF.L.ライトが推奨した天井高の変化による空間演出が見られる。

 

ダイニングよりリビング方向を見る

天井高4.5mの大空間

LDKは、庭との関係からリビングを東側に配置し、西に向かってダイニングとアイランド型のキッチンが大きな気積の空間に並ぶ。これだけ大きな空間をつくると空調も大変だろう。なぜこれほど天井の高い空間にしたのか。

三木さんは、これまで数多くの住宅をSE構法で設計していて、せっかく自邸を建てるのだから、SE構法の性能をできる限り引き出してみたいと考えた。挑戦する対象は柱の長さで、120mm角の柱材を使ってどこまで高い空間をつくれるのかというチャレンジである。そして、水平構面を5mの高さまで持ち上げ、4.5mの天井高の空間を実現した。

しかし階高が5mもあるので、2階までの距離が通常の倍近くなる。そこで一部2階の床レベルを下げて大きな踊り場のような場所を設け、ホールと書斎にあてている。一方で、キッチン上部からホールにかけて連続したL型スラブを設けることは、この階高を支える泰進要素としても重要だった。

ここで階段を折り返し、2階には、主寝室、子ども室、浴室と、ホールの上部にあたる部分にはバルコニーを配置している。天井高は2,200mmと1階の約半分である。子ども室の入口には扉を設けずカーテンで仕切っている。部屋に籠る子どもになって欲しくないからだそうだ。個室群のプライベート感が強い。時空間的に距離が取れていることの効果だろう。

 

南側全景

架構図

 

応接間+勉強部屋という2階ホール

ホールの壁面には本棚が並び、広い書斎のような体裁である。三木さんはこのホールを、お客さんとの打ち合わせスペースや子供の勉強部屋として考えた。応接間と勉強部屋を一緒にした新しい考え方のリビングとも言えよう。それが吹き抜けの中間部に配置されている点も興味深い。

平面上は、東西方向が5,500mm+3,850mm、南北方向は室内に唯一現れている柱までが4,100mmと、SE構法であればそれほど大きく飛ばしている印象はない。見慣れない寸法に感じられるのはメーターモジュールを採用したことによる。階段とホールの床を支える柱は荷重が集中するところなので170mm角を採用し3mmの薄板を貼って仕上げている。柱位置はリビングとダイニングの間を狙って決めている。位置決めに制約がほぼなく、そこはSE構法の強味であり、設計者にとっては、構造が空間に従ってくれる、という利便性でもある。木部の仕上げは、全体的に濃い色を選択し、構造体にも仕上げを施している。

 

天井高4.5mの大空間を見る。右手が2階ホール

2階ホール

 

実はゼロエネルギーハウス

いかにも空調効率の悪そうな大空間だが、この住宅はゼロエネルギーハウスの認定+補助金を受けていて、太陽光発電とエネファームタイプSを設置したオールガス住宅である。訪問したのは真夏だったが、24時間エアコンをつけっぱなしで、電気代は月額1, 500円程度、ガス代は月額6 ~ 7,000円とのことで、それまで住んでいたオール電化の賃貸集合住宅に比べてエネルギーコストが1/3以下になったと言う。

開口部にはシャッターを付けて、網入りガラスを排除し、見た目の美しさだけでなく、サッシュの枠の見付も小さくすることができ、トリプルガラスも採用できた。

大空間の空調効率の問題は、外周部の熱貫流率を下げ、イニシャルコストはかかってもランニングコストを大幅に軽減できる機器を導入することで解消できてしまうこと、窓回りもシャッターとの組み合わせで意匠的にも性能的にも大幅に改善されること、そうした新しい個別技術の積み上げが、住宅の空間のあり方も変えつつあることを、この住宅は物語っている。

結果的に堺M邸は、旗竿敷地でも快適な空間をつくれるという実例として、アドヴァンスアーキテクツ株式会社のモデルハウスのようなものとなった。そして自分の設計した家にこれから家を建てたいと思っている人を招き入れ説明したりすることが、三木さんの新しい生活の一部となった。

 

子ども部屋を見る

浴室からバルコニーを見る

 

 


堺M邸
設計・施工:アドヴァンスアーキテクツ株式会社


写真:杉野 圭 文:橋下 純