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物件紹介
2024.02.13

SE構法施工物件紹介[住宅 20]

大泉学園K邸

20年後のリノベーションを受け止める

家族の成長や働き方の変化を想定し、家の機能を変えていきたいという施主の希望を、界壁を抜くことができるSE構法のラーメンフレームが受け止める。

「大泉学園K邸」は、西武池袋線大泉学園駅にほど近い住宅地に建つ。今回は、施主のKさん夫妻と、設計を担当した株式会社アーキ・モーダの加藤由美子さんと田中貴志さんにお話をうかがった。

SE構法を探し当てる

Kさん夫妻は共働きである。Kさんは光学機器の貿易に関するビジネスコンサルティング、夫人は革製品の加工に用いる専用工具を取り扱う貿易業を営む、共に専門分野のエキスパートである。

これまでは大泉学園に自宅と仕事場を別々に借りていたが、それらをひとつにまとめ、かつふたりの子どもの学区域を考慮して同じ地域内で土地を探して家づくりを決めた。土地購入時に敷地には築5年のまだ新しい、しかし小さな家が建っていた。その家を建てたハウスメーカーに相談して増改築して住めないか検討したが、リノベーションしても自分たちの希望を叶えられるような自由度がないことと、ハウスメーカーの設計担当とのやりとりが流れ作業的で行きつ戻りつしながら家づくりを楽しむゆとりが許容されにくかったことに違和感を感じて断念した。

ふたりには、将来、子どもたちが独立したら1階の趣味室と個室の界壁を撤去し、3間続きのオフィス空間に拡張させたいという希望があった。15年20年先の改築のイメージが具体的にあり、それが可能かどうかは重要であった。つまり界壁に耐震壁を入れなくても成立するラーメンフレームの架構は必須だったのである。

共働きゆえふたりの時間は限られる。そこで、ネットを駆使してハウスメーカーやビルダーを調べ上げ、関心を持った会社すべてに一斉に資料請求し、最終的にアーキ・モーダに設計施工を依頼することにした。

実は夫妻はそのリサーチの過程でSE構法も発見している。将来の可変性に加え耐震性能にも強い関心を持っていたKさん夫妻は、設計者に紹介されるまでもなく自力でSE構法を見出していたのである。

 

玄関ホールを見る。土間を脇に回り込ませているので、来客時もゆったりと使える。

趣味室を見る。現在は梯子でロフトに上がる。右奥の界壁は抜くことができる。

洗面・脱衣室を見る。

 

ブログとSE構法

アーキ・モーダは、2009年に誕生し今年で設立10年を迎えるまだ若い会社である。もともと不動産+建築系会社に勤めていた仲間5人が、自分たちの目指す建築をつくろうと独立して始めた。加藤さんも田中さんもその創立メンバーである。

SE構法の登録工務店になったのは4~5年前とのことで、現在、アーキ・モーダのウェブサイトではSE構法を強く押し出しているが、Kさんたちが彼らのサイトを見始めたころはそれほどでもなかったと言う。Kさん夫妻は自らSE構法をもっとアピールすべきと、今回の自宅建設に際して、SE構法による建設レポートをアーキ・モーダのサイト内のブログで詳細にレポートしてもらえるように進言した。

アーキ・モーダの社長・鈴木快さんのブログは2017年9月に始まり、ほどなく「大泉学園K邸」の建設過程が、基礎施工段階から詳細にレポートされた。

出来上がってしまえば見えなくなってしまう構造躯体や壁体内の断熱工事などについての詳細なレポートは関心を呼び、サイトのアクセス数を10倍に増やし、アーキ・モーダにおけるSE構法採用率も大幅に高まる結果となった。専門的な話ではあるが、具体的かつわかりやすく情報を開示したことで、多くの方々に関心を持ってもらえたことの証である。

 

和室よりダイニング、リビング方向を見通す。ハイサイドライトは夏場の直達を遮り、冬場の日射を取得する。

 

職住一体化を見据えて

敷地は西側接道で東西に長い形状である。北側に駐車場と住宅用の玄関を取り、南西側に夫人の仕事場になる予定の趣味室を配し専用の入口とトイレを設け独立した空間としている。趣味室の部分が南側にずれた雁行状の平面構成である。

趣味室の広さは4,550mm×3,640mmである。将来の拡張計画はあるが、現時点ではこれ以上の広さを確保できないため、ロフトをつくってそこを収納スペースに充てることにした。しかし2FLをこれ以上高くはしたくないので、地下を掘って3,400mmの天井高を確保した。ここで店舗、あるいは機器の扱いやレザークラフトのワークショップなどを始めたいと考えているため、相応の部屋の広さは必要だった。

1階は、土間を広く取った玄関の奥に、子ども室と主寝室、Kさんの書斎を配している。

2階は、中央にLDK、趣味室の上部には和室を、浴室などの水回りは東側にまとめている。和室は、当初は洋室で計画したが使い勝手を考え和室に変更した。来客時の寝室あるいは気分を変えてちょっとゴロッとするにしても、和室ならば多様な使い方に対応可能で、LDKとの空間の分節もできる。

LDKは間口4,550mm奥行7,280mmの無柱空間で、西側をキッチンとダイニング、東側をリビングにしている。リビングの奥の書斎コーナーは夫人の執務スペースである。当初、水回りを北側に寄せて南側をLDKにする案、つまり、間口3,640mm奥行10,920mmの空間とする案も検討したが、キッチンを南向きに配置できないこと、3,640mmでは空間の広がりが乏しくSE構法のメリットを生かし切れないことから現在の案に落ち着いた。SE構法ならではの空間を追求した結果だった。屋根は、LDK部分は南側からの採光を確保するために跳ね上げて片流れとし、ハイサイドライトを設けている。水回り部分は高さを必要としないので切妻にしている。

バルコニーの出は1,820mmと大きく、しかも手摺壁を1,800mmと高くしたので、隣地からの視線を気にすることなくリビングの延長のように使うことも可能である。

 

西側全景。手前の塀は既存で、塗装して建物に合わせている。右側の色の濃い部分の1階には将来仕事場となる趣味室が置かれ、専用のエントランスを設けている。

架構図

 

戸建て住宅のスケルトンインフィル

大泉学園K邸は、一般的な核家族住宅が職住一体型住宅に遷移していくことを前提に設計されている。1階が徐々に家族生活以外の空間へと変化していけるということは、これからの社会のあり方を反映した住宅に求められる重要な要素であり、そのためには竣工後の可変性は住宅の大きな性能のひとつとなる。言い換えればこれから住宅は、スケルトンインフィル的な考え方でできている必要があるということだ。住宅は生活の変化を受け止められなければいけない。その意味でこの住宅は、働き方と生活空間のあり方について、今後の方向性の一端を見せてくれている。

 


大泉学園K邸
設計・施工:株式会社アーキ・モーダ


写真:新澤一平 文:橋下 純