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物件紹介
2022.11.02

SE構法施工物件紹介[住宅 8]

土呂S邸

どのような場所でどのように暮らしていきたいか、どのような家族でありたいか。住み手の理想にかたちを与えることができたのは、ハウスメーカーのシステムではなく、自由な空間を支えられるSE構法であった。

「土呂S邸」は、JR宇都宮線土呂駅から北東に約1kmのところに建つ戸建て住宅である。今回は建主のS夫妻にお話をうかがった。

家族でプランを考える

玄関ホールからLDKを見る。正面奥のデッキ方向に視線が誘われる。

 

家を建てるにあたって夫妻はハウスメーカーにも相談している。変形敷地に広いLDK、西側の眺望を生かした間取りなど、敷地の特徴や生活上の要望を渡して出てきた回答は、自社のスケルトンモジュールを優先した架構に温熱性能の数値向上だけを意識した間取りで、まったく納得のできるものではなかった。柱位置を変えることはできるがモジュールが変わるので増額になるといわれて断り、かねてから気になっていたRクラフトに依頼した。
具体的な生活空間のイメージを持っていた夫妻は、建築士であった妻の父のアドバイスを受けながら、建主主導のプランニングにチャレンジした。

住宅に求めたのは開放感を感じながら安らかに暮らす空間。そこでもっとも重視したのは西側に広がる見沼田んぼへ向かって開かれた眺望である。ただし間には道路があり、通行者の視線は気になる。2階をリビングにする案も検討したが、その場合1階が寝室となり、仕事で疲れた日は寝室に直行してしまいそうで、家族のあり方として好ましくない。1階をLDKにして眺望を確保しながら外部からの視線を遮るにはどうしたらよいかが課題となった。幸いGLが公道より約900mm上がっており、1FLはGL+600mmなので、南側にLDKと連続したデッキをつくっても、デッキの床レベルはGL+1,500mmとなり、通行者の視線は気にならない。西面の窓も南側に寄せ、デッキを活用することで1階で見沼田んぼの自然環境を楽しむという課題は解決した。
駐車場は、もともと敷地の北側に道路面へのすりつけがあったのでそこに配置し、屋根を架けてインナーガレージとした。エントランスは北側からのアプローチを長くとって東面中央部に設けた。道路と 敷地のレベル差の解消に加え、回り込んで東側からアクセスすると、LDKに入ったとき南西のデッキ越しに彼方まで視線が抜けて心地よいからである。
玄関を入ると、左手がリビング土間で自転車やDIYグッズの収納などが置かれ、南側壁面に沿って要望のひとつだった薪ストーブが設置されている。玄関右手にはシューズクロークを設け、その奥は駐車場上部の小屋裏収納で、天井は低いが夫の隠れ部屋のような空間になっている。

 

南東側から見た架構図。門型フレームの架構がよくわかる。梁成は390mm。

LDKからリビング土間を見る。右手は薪ストーブで、煙突周辺を吹抜けにしたので、階段と平行に架かる梁の荷重は、吹抜けの手前で左右の梁に振り分けている。

 

 

2階は西側に主寝室を配した。西面には大きな窓を開け眺望を満喫する。西陽が暑いことは十分に想定されたが、優先すべきは眺望だった。階段を挟んで東側は子ども室を想定している。現在はひとりが、増えたらその都度、間仕切り壁を入れて、3室まではつくれるように考えている。だが家族の成長や構成の変化によっては、主寝室も固定ではなく単にいちばん眺めのいい部屋と位置付け、必要に応じてみんなで話し合って部屋割を変えればいいと考えている。
主寝室から2段上がって書斎コーナーがある。レベル差をつけることで空間的な分節が図られている。現在はコロナ禍のリモートワークの場として夫妻のいずれかが使用している。
1階リビングの掃き出し窓から延長されたウッドデッキは、季節の移ろいを感じながら家族でくつろぐ場所として計画されたもの。夫妻が父親の協力も得てこの夏にDIYでつくったという。住み始めて約1年だが、すでにカスタマイズが進行している。

 

主寝室入口から寝室1(左手)と寝室2(正面)を見る。寝室2へのアクセスは現在はないが、子どもが増えて必要になったときに、階段上部に床を設けて入口をつくる予定。

南側のデッキスペースを見る。道路面から約1,500mmほど上がっているので、通行人とは目線が合わない。(写真:建主提供)

南西側から見る外観。右手にDIYによるデッキスペースが見える。

エンジニアから見たSE構法

架構で目を引くのは南面に並ぶ4本の平角柱である。南面には開口部が多いこと、プラン上、東西方向に耐力壁が少ないことから、南面で門型フレームを組み、水平力を担保することにした。プランが五角形なので、直角に納まらない隅部には特注金物が使われるが、北西の角では、さまざまな角度から挿し込まれる梁材を適切に受けるために、一部、梁位置を上下させて調整している。小さな住宅だが、思いをかたちにするために、架構に多様な工夫が盛り込まれている。
エンジニアである夫妻に、SE構法のどこに魅力を感じるかを聞いたところ、ルールと数値に根拠があること、という答えが返ってきた。それぞれの部材強度とそれを用いた場合の接合部の強度が数値化されていること、これはまさにSE構法の強みであり、建主がそのことに共感していた。

 

2階ベランダよりホールを見る。正面の布が掛かっている部分が階段。右手は子ども室想定のスペース。

駐車場上部の小屋裏収納。夫の隠れ部屋でもある。

 

 


土呂S邸
設計・施工:Rクラフト株式会社


写真:上田宏 文:橋本 純