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物件紹介
2022.08.30

SE構法施工物件紹介[住宅 6]

le pain le pain

製造部門を併設した店舗の上に住宅が載る。
それぞれに求められる必要寸法や空間配列の違いを、SE構法の架構が受け止める。

「le pain le pain(ルパンルパン)」は、愛知県蒲郡市にあるパン屋である。2013年に創業し、テナント店舗で営業してきたが、このたび住宅併設の新店舗を誕生させた。オーナーでパン職人の根津馨さんと夫人の聖子さん、設計監修と施工を担当した有限会社コバヤシホームの小林正和さんにお話をうかがった。

コバヤシホームと出会う

東新築に際して根津さん夫妻は、さまざまなハウスメーカーのモデルハウスをめぐり、建築設計事務所や工務店を訪問するなかで、小林さんと出会い、その人柄と仕事の仕方に共感し依頼した。コバヤシホームは小林さんの父親が20年ほど前に興した工務店で、代替わりをして7年ほど経つ。小規模な工務店で、設計も現場監督もすべて小林さんが行っているため、年間竣工棟数は3~5棟程度である。そのなかでこれからの住宅のありようを模索しつつ自社のブランドイメージを確立していくために小林さんが取り組んだのはパッシブデザインであった。それを実現する最適な構法としてSE構法と出会い、今では全棟をSE構法で建てる。 根津さんと小林さん、ふたりとも蒲郡という地方都市を拠点とし、自分の手や目がしっかり行き届く範囲を定め、むやみに規模を拡大するより高い品質を維持していくことを重視するビジネスの姿勢は共通している。

 

店舗から厨房方向を見る。上部の梁は化粧だが木質の温かい感じを出すことを意図してつけられた。階高は3,000mm。左端の壁際には、厨房から店舗に直接アクセスできるように幅300mmのパスを設けている。

厨房を見る。右奥がオーブン。店舗側を向きながら作業をする。外部からも厨房がのぞけるように、大きな開口部を設けている

 

左:厨房から店舗とサンドルームへつながる作業動線を見る。 右:1階事務室兼収納を見る。壁面を全面本棚とした書斎のような空間。奥の壁は車路の隅切り部分。

架構図

 

配置と店舗計画

敷地は蒲郡市役所のすぐ北西に位置し、県道の1本北側を並行して東西に走る道路に面する。南東の角地だが変形したL字形で、来客用と従業員用の駐車場をそれぞれ確保した上でこの建物配置と形状が決定した。間口22,000mm奥行6,000mmの矩形平面で、1階がパン屋で2階が住宅、全体がメーターモジュールで構成されている。 1階西側に5,000mm幅の通路を開け、その奥に従業員用駐車場、住宅用玄関、材料搬入口を配することで、来客用ゾーンとの分節を図っている。 ストックヤード、厨房、店舗、サンドルーム(サンドイッチなどをつくるスペース)を並列させ、北側にそれらを貫く動線を設けた。ストックヤードの奥には書斎のような事務室を設け、住宅用玄関と直接行き来ができるようにした。厨房では、南側に設けた大きな開口部からパンの焼き上がりや製造の様子が見えるように、フランスのボンガード社製オーブンと作業台を対面で配置している。また以前から行っていたパンづくり教室を、ここでも店舗部分を利用して開催しようと、厨房から直接店舗へ出られるパスと、サンドルームの南側にトイレも設けた。店舗部分からも厨房の作業風景が見えるように、両者の間には壁を設けず一体感のある空間としたため、このふたつの空間の間には1箇所120mm×360mmの平角柱を配しただけで他に柱はない。 根津さんの、地域に開かれたパン屋を目指す姿勢がプランニングと架構にも現れている。

 

キッチンからリビングとバルコニー方向を見る。バルコニーと床レベルを揃えている。

店舗の上に住宅を載せる

2階のLDKは4,000mm×3,500mmのバルコニーをL字形に囲むように配され、ここが住宅の中心部分となる。リビングよりも広いバルコニーを設けたのは、地上面はほぼすべて業務用地であり、ここにしか庭が設けられないからである。床をデッキ仕上げとしリビングと面一にした家族のための空中庭園である。バルコニー下階は厨房で、梁の天端を300mm下げて納めている。早朝から稼働する厨房の上部を外部とすることで、住宅部分への音の伝達を軽減することも考慮された。 キッチンの背面にはクローゼットを兼ねたユーティリティを設け、その北側が浴室である。業務上不規則な時間に入浴することになったとしても、家族の睡眠を妨げないため、寝室と浴室回りを分けて配置している。そしてその浴室は5,000mmスパンの通路の上空に置かれた。 店舗には業務上必要な空間配列とモジュールが、住宅には日常生活に必要な空間の広がりと配置があり、それらは異なるものである。その両者を積層可能とするためには、上下階の空間的要望を構造体が制約しない能力をもつことが前提となる。上階の荷重を適切に分散・伝達できる接合部と部材強度をもったSE構法は、店舗併用住宅というビルディングタイプに相応しい架構だといえる。

 

リビングからバルコニーとDKを見る。キッチンとダイニングを直線で並べ、リビングとバルコニーの4つで四角いパブリックゾーンの中心を形成している。

リビングを見る。北側の壁面を全面本棚とし、中央にFIXの大きな開口を設けて、窓のなかで読書をしている気分になれる空間を設えた。

 

 


le pain le pain(ルパンルパン)
設計監修・施工:有限会社コバヤシホーム
設計:中野建築設計事務所


写真:杉野圭 文:橋本 純