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2022.05.17

SE構法施工物件紹介[住宅 4]

新栄の家

在来工法では難しい、重量鉄骨造でも難しい、SE構法を採用してこそできる構造と空間にはどのような広がりがあるのだろうか。 そのことを考え続ける設計者の自邸における挑戦である。

「新栄の家」は、名古屋市中区に建つ木造3階建ての都市型住宅である。建主で設計者でもある阿部建設株式会社専務取締役の阿部恵彦さんにお話をうかがった。

都心に住む

阿部さんは、これまで名古屋市郊外に住んでいたが、自分が50代半ばを迎え、将来のことを見据えて都心居住を決断し、今回の新築に至った。
敷地は南側接道で道路幅は8m、近隣商業地域である。1階には玄関と車3台分のインナーガレージ、ワークルームと納戸を配している。ガレージスペースは高齢化し運転しなくなったときに別用途に改装することを視野に入れている。納戸には、将来、家庭用エレベーターの設置を想定している。なので、各階とも同じ位置を納戸にしている。隅に水平構面が入れられないので、構造設計上は難しい箇所のひとつでもある。ワークルームはサイドビジネスの仕事部屋を想定している。
2階は南側にLD、中央に和室を配置し、その脇にキッチン、奥が洗面脱衣と浴室である。家事動線と浴室の利用頻度を比較してこの配置を選択している。和室は、日常はLDの一部として使われるが、独立した子どもが家族を連れて帰省したときは、寝室として使えるように、90度回転する障子を押し入れ脇に格納している。
阿部建設では、建具は引き戸で壁体内に引き込む納まりを標準にしている。そうした手間のかかる建具工事は自社大工が中心となって工場で手加工することで、メーカー品に頼らない木工事のディテールを実現している。
和室の押し入れの隣には、床下冷暖房システムの機器を置いている。そこから2階床下のエアチャンバーに暖気を送り、2階は床吹き出し、そこから3階天井裏までダクティングして上階を空調している。耐火・気密・断熱性能を高めた外壁厚を考慮し、廊下・階段部分の幅を十分に確保するためにX6~8通りの2間だけはメーターモジュールを採用した。3階には3つの個室を用意し、中央部に共有のWICを配している。
阿部さんは、歳を取れば取るほど個々人の時間が必要になってくると言う。主寝室や子ども室と言ったヒエラルキーをなくした個室3つは、家族構成が変わったとしても対応力がある。

 

和室からLDを見る。左手前から障子が引かれてきて壁柱のところで90度回転して納まる。建具枠の上下4箇所に丸く加工した堅木を取り付けて4点支持にすることでその動きを可能にしている。

架構図

 

リビングからダイニング方向を見る。和室の障子を閉めた状態。

和室から階段室方向を見る。

 

SE構法でなければできないことをやる

阿部建設では、品確法の施行後、在来木造の構造を壁量計算から許容応力度計算に切り替えた。しかし、その手間やコスト、時間を鑑みると阿部さんは、全棟SE構法の採用が可能だと考えている。なので、住宅設計に際してはいつも、SE構法でなければできないことをやろうと心がけている。それがSE構法を採用してもらう上で建主にも社内にももっとも説得力を持つからである。建主との打合せにおいても、在来であれば間違いなく必要とされる柱を、「これを抜いて計算してみてもらいましょう」と話す。エヌ・シー・エヌの構造担当者はそれに的確に応えてくるから、その提案を見ながら建主とSE構法の設計力の高さを共有する。理解あっての技術であり、それを伝える努力を怠らない。
今回の住宅では玄関脇のオーバーハングに目が行く。ここは隅柱が欲しい箇所である。しかもその左側は駐車場の門型フレームで、そこには上2層分を支える柱が載る架構の難しい箇所である。しかし玄関先のユーティリティと開放感はどうしても欲しかったので、この構成で構造設計を依頼した。
一方で、X6-Y5の柱と耐力壁は残した。なくしてしまえばより広がりのあるLDと和室になっただろう。だがその代わりX6、あるいはY5通りに170mmの柱が出てくる可能性があった。それで全体のモジュールが狂ってくることを嫌ったのである。阿部さんは、エヌ・シー・エヌにチャレンジを求める一方で、いつも壁をどこに置くと効率的な設計になるのかを意識する。大空間やスパンを飛ばすだけでなく、SE構法ならではの合理的な解法をいつも追求している。なぜならそれこそがクライアントの費用対効果への最良の解答になるからである。

 

南側ファサードを見る。右下の隅柱をなくして玄関先の広がりをつくり出した。右手の2、3階をボリュームとして見せるために、X4通り(インナーガレージ上部)で柱位置を120mmずらしている。インナーガレージは両脇に120mm×360mmの平角柱を配し、5,460mm飛ばしている。ガレージの幅は4,700mm。

左:1階廊下からインナーガレージを見る。右奥にはワークルームが見える。 右:2階洗面脱衣室を見る。無印良品の収納ボックスに合わせて収納戸棚を設計している。

 

 


新栄の家
設計・施工:阿部建設株式会社


写真:新澤一平 文:橋本 純