SE構法による経営活用法 vol.1
当社アーキ・モーダは、SE構法を採り入れてから10年弱になります。現在は年間15~20棟くらいのペースで、自社の設計・施工物件と設計事務所からの受注物件が半々くらいの割合になっています。自社物件についてはほぼSE構法を採用しています。
最初のうちは、従来手がけていた木造軸組み工法よりもコストアップするので、お客様の予算を推しはかりながら、SE構法で提案するかどうか、少し考えたりする時期もありました。
よく、打ち合わせが進み、いろいろとご要望を採り入れていくうちに、結構見積金額が膨らんでしまうことがあります。お客様から「これ、在来工法にしたらいくら下がります?」などと聞かれたりもしますが、そういうときは「SE構法だと4寸柱を使いますが、在来工法だと3寸5分の柱になります。その分、壁厚が薄くなるので、壁の中に入れる断熱材の量も変わってしまいます」と説明しています。
柱でいえば断面が1.3倍、梁は1.7倍も太いものを使う。材積がそもそも違う。基礎も金物も違う。在来工法の見積もりのほうが安く見えるかもしれないけど、同等の仕様にしたら、結局、SE構法と同じか、むしろ高くなってしまうかもしれません。
当然お客様は皆さん、性能がいい家を求めています。断熱性や耐震性が落ちてもいいから安くしたい、という方はまずいません。SE構法の仕様や価格の意味を具体的に説明すれば、必ずこちらを選んでいただけます。
私たちは「デザインと性能の融合」というテーマを掲げて、家づくりを行ってきました。これからの時代に必要な性能を持った住宅を建てていきたいという想いのもと、SE構法に絞ることに迷いはありませんでした。
ただ、SE構法を家づくりの軸に据えるうえで、現場監督や大工、職人たちの協力も欠かせません。実績や経験のある人ほど、新しいことを採り入れるのに抵抗を示すものです。「今までこれでやってきたのになぜ変えるんだ」と。それでも何棟かSE構法の家を建てていくと、次第に受け入れてくれるようになりました。大工の視点からいうと「施工精度が高い」ということが納得できる決め手になったようです。通常だと構造材をミリ単位で調整して金物や釘で固定して、それでもずれや狂いが生じてしまう。それがSE構法ならピタッと決まる。これが現場で体験した大工の偽りのない感想です。
プランから施工までどの場面でも、私たち自身が「SE構法が最善」という確信を持っていないと、その良さはお客様になかなか伝わらないと感じています。
自社受注においてSE構法一本でいくと決めてから、安定して受注できるようになりました。そうした受注を支える意味において、私がSE構法でもっとも評価しているのは、施工法の開発から構造計算、部材調達、プレカット加工、現場での品質管理にいたるまで、一貫したシステムが提供されている点だと思っています。
従来の家づくりですと、個々の工務店が構造計算やプレカットをそれぞれ外注して、自社で我流の施工管理を行います。そうしたぶつ切りのプロセスの中で品質を保とうとするのはなかなか大変です。
その点、SE構法では、エヌ・シー・エヌがそれぞれ専門的な見識のもとで信頼のおける家づくりの仕組みを提供してくれています。大手ハウスメーカーでしかあり得ないような一貫したシステムを私たちのような町場のビルダーが使えるわけですから、これは大きな魅力です。
お客様には「どんどんよそのハウスメーカーを見てきてください」とお話しています。実は私もハウスメーカーに勤務していた経験があるので、どういう住宅を作っているかはよく知っています。SE構法なら、他社に構造や性能の面で引けを取ることはありませんし、大手ハウスメーカーの見積と比べても「SE構法は高い」とは感じないはずです。そうなると純粋にデザイン勝負ですが、そこはハウスメーカーと競合しても負けることはまずありません。「お客様に大手を回ってきてもらってからプレゼンする」というのは、当社の必勝パターンですね。
現在、常用の大工は7人ほど。施工棟数自体、これ以上増やすことは考えていません。当社の大工も40代後半になってきていて、以前ほど動けない。また、準耐火仕様だと重いボードを取り回さないといけませんし、夏もこれだけ暑くなると、工程にもある程度余裕を持たせないといけない。
彼らにきちんとした額の賃金を支払うためにも、供給する住宅は付加価値の高いものにしないといけないと思っています。そういう意味でも、SE構法は当社の経営にとって、重要な要素の一つといえますね。
商品のブランドが複数あると、社員にも迷いが生じるかもしれません。当社は基本的に私が接客しているのでいいですが、もし営業担当の社員がいたら、どうしても売りやすい商品から提案していくはずです。単価の安い商品と高い商品があったら、安い見積もりで顧客を引き付ける低価格帯の商品を推してしまう。ただそれだと、本当にお客様のニーズを満たした、付加価値の高い住宅を提供できるのか。
私は「デザインと性能の融合」という当社のテーマを具現化するため、SE構法に絞りましたが、こうした迷いを生じさせないという意味でも効果的でした。私自身も含めて、社員がSE構法を使うことで、家づくりに対する意識が一つになったように思います。
私の考え方が経営的に正しいかどうかは、答えはまだまだ先の話です。でも会社のトップは、自分が正しいと思ったことをやり続けるしかない、そう考えています。
取材:2023年8月29日
株式会社アーキ・モーダ
代表取締役 鈴木 快
設立:2009年10月
住所:東京都練馬区練馬3-19-17 ニューハイツ練馬1F-101号
https://www.archimoda.jp/