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物件紹介
2023.02.28

SE構法施工物件紹介[住宅 12]

un白木

庭と居室の千鳥配置

庭と居室を千鳥に並べ、それをSE構法の強固な躯体で支える。
スケルトンインフィルの新しいかたち。

「un白木」は、株式会社チェックハウスが岐阜県本巣郡北方町に開発した分譲地の一画に建つ同社のモデルハウスである。代表取締役社長の草野謙輔さん、設計を担当したアキチ アーキテクツの吉田州一郎さんと吉田あいさんに話をうかがった。

豊かさの表象としての平屋

チェックハウスは1978年に現会長の草野正三さんが内装業として起業した。1993年に現在の社名に変更し不動産業へ業態をシフトする。草野謙輔さんが加わり、2004年には建設業許可を取得して住宅地開発が担えるビルダーとしての体制を整えた。

草野さんの住宅事業は平屋の自邸建設から始まった。それは、海外のリゾートで体感したワクワクするような空間体験のエッセンスを存分に投入して建ち上がった。チェックハウスのウェブサイトに記されている「BE EMOTION 毎日、一生、胸躍る家を建てよう」の実践の始まりだ。草野さんは入社するまでは建築の設計、施工に携わった経験はなかった。しかし自らの体験を信念に自邸をつくり上げたのである。その後、約170坪の土地を仕入れ、区画割りすることなく1棟のモダンで大きな平屋を建てたところ、多くの来訪者を得て、すぐに売却に至った。草野さんの住宅に対する考え方への共感者も現れて、以降、平屋の注文住宅を次々に手がけていくことになった。

以来チェックハウスは非日常を日常にプラスした「リゾートスタイルの家」を提案し続けている。一般的には、自然環境に恵まれ日常を忘れてリラックスできる空間というのがリゾートのイメージだろう。チェックハウスの提案する平屋は、広い敷地にゆとりのある設計でそれを実現している。広ければ非日常が日常を圧迫しないで済むという考え方である。

地方都市であっても駅や中心市街地周辺の地価は相対的に高く、家を建てようとすれば、狭小地に建てざるを得ない。そこに上記のようなリゾート性を無理やり詰め込めば、どこかで機能的破綻が起きる。しかし、完全な車社会であるこの地域において、はたしてそうした場所性はどの程度価値を持つのだろうか。チェックハウスでは、そうした従前の立地への価値観に重きを置くのではなく、ゆとりのある暮らしができる大きさにこだわった。機能主義とリゾートスタイルの生活は両立できる。

 

2階個室Cから中庭と家事室方向を見る。


アキチ アーキテクツと組む

さて、そうした住宅にとって重要になるのはデザインである。チェックハウスでは当初から建築家・設計士との協働を原則としてきた。

草野さんは、吉田さんたちと、共通の知人を介して出会う。そして草野さんは、ときを置かずに吉田さんたちの事務所を訪ねた。東京の中堅世代の建築家の設計を肌で感じてみたかったのだろう。吉田さんたちのオフィスは、東京・渋谷区の極小敷地に建つ鉄骨造4階建ての建物で、自宅とシェアオフィスとシェアキッチンを備えた特徴的な構成を持つ。草野さんが岐阜で建てている住宅とは真逆の建物に、彼は遊び心という共通点を見いだした。

もちろん吉田さんたちの設計は遊び心からではなく、都心居住の可能性を切実に模索してのことだが、狭小地での型にはまらない実践に草野さんは惹かれて設計依頼をする。草野さんの、胸躍る住宅の、次への展開が始まった。

 

右:2階個室Aから中庭方向を見る。右奥にポーチ上部の屋上緑化が見える。 左:2階個室Bから吹抜けを見る。ボリュームの接合部に置き屋根を架け渡すようにして空間をつなげている。

 

中庭型スケルトンインフィル

当初草野さんはチェックハウスらしい広い敷地を用意し、吉田さんたちは、庭と建物が千鳥状に並ぶ構成を提案し、計画を進めていた。しかしその後、現在の場所に敷地が変更された。ここでは平屋は難しい。だが吉田さんたちは、2階建てになっても千鳥配置の考え方は踏襲した。

平面は、中央部に4,095mm×2,730mmの中庭を配し、それを開放的な4つのボリュームが取り囲む構成である。庭と建物の千鳥配置は、すべての居室で4面採光と庭へ開くことが可能で、庭と建物が等価に扱われる形式である。外壁面積が大きくなるのでコストはかかるが、明るくて緑豊かな暮らしを手に入れることができる。草野さんも自宅の中庭とは違う小さな庭の新しい価値を感じた。

 

左:1階ホールからリビング方向を見る。 右:1階リビングから中庭方向を見る。

 

吉田さんたちは、千鳥配置のメリットとして増改築の容易性も提案している。必要に応じて同じ形式で水平展開できるからだ。加えてその千鳥配置の架構をスケルトンインフィルで考えることも提案した。ダイニングからつながる離れは、趣味の部屋として内側から使うこともできるし、ピロティと連動させて外側から小商いの場とすることもできる。床を取り払えば駐車場に変えることもできる。ポーチ脇のガレージハウスも土間空間として多様な使い方ができそうだ。これらの部分の仕上げは基礎も含めて構造躯体と切り離したインフィルの扱いで提案されている。

この住宅は規格住宅である。吉田さんたちは、千鳥配置の空間構成、それを支える強固な架構システムとモジュール、そして素材とディテールを共通条件とすることを提案し、施工するチェックハウス側はそれを受け入れた。

庭と居住空間が小さな単位で交互に連続する空間は、ある意味で均質な空間構成である。どこをどのように使うかは住み手次第だ。本来住宅は変化への対応力が求められるものである。それを担保するためにスケルトンインフィルの考え方が導入され、SE構法の強い軸組がその架構を実現している。

 

南側外観全景。1階屋根では一部屋上緑化がなされている。左奥の2階屋根はスケルトンインフィルの考え方を表現したもの。2重の屋根とすることで、温熱環境にも寄与している。

架構図

 

 


un白木
設計:株式会社アキチ アーキテクツ
施工:株式会社チェックハウス


写真:新澤一平 文:橋本 純