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耐震構法SE構法について
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導入事例
2021.10.01

SE構法導入企業インタビュー vol.4

皐工務店株式会社 代表 澤口 茂 氏

「”うちにしかできない家”を提供する」

今年(2021年)は、SE構法登録店になってちょうど10年。山あり谷ありではありましたが、得たものも大きく、当社にとって次のステージへ向けて変革に踏み出す1年になりそうです。 まずひとつめは、このエリアの中核都市である長岡市にSE構法による3階建てモデルハウスを設けることです。私の地元である十日町市は人口5万人。豪雪地帯ということもあり、年々過疎化が進んでいます。対して、長岡市は新潟県第2位の人口26万人の規模があります。地元でなんとかSE構法の家を普及させたいと奮闘してきましたが、人口の面からしても限界を感じるようになってきました。
そこで長岡市への進出を考えたわけですが、お客様が多いということは当然、競合他社も増えます。他社にない、”うちにしかできない家”を打ち出す必要があるわけです。今、建築中の長岡のモデルハウスのセールスポイントは、「狭小地でも積雪や地震に強い木造3階建てが可能」ということです。
モデルハウスの敷地はわずか15坪。隣地境界線とは30cmほどしか離れていないので、屋根に積もった雪を敷地内におろすことができません。しかし、当社で手がけているSE構法による耐雪住宅であれば、ひと冬、雪を屋根に載せたままでも大丈夫。重労働で危険な屋根の雪かきが不要になります。また、こちらは車社会ですから駐車スペースは必須ですが、SE構法であれば1階部分にしっかりビルトインガレージも用意できます。
街中の狭小地であっても、積雪に耐える3階建てが可能で、ビルトインガレージがあって、長岡花火も見物できる屋上テラスもある。敷地の限られた都市部であれば、SE構法ならではの強さや間取りの可変性がそうした形で生かせるのではないか、と考えたのです。
ちょうど、長岡市の市街地には、建て替えどきの建物も多数あります。秋ごろにはモデルハウスを完成させてオープンする予定ですので、そこから先の営業戦略を検討しているところです。 実は長岡市への進出を図ったのは初めてではありません。2014年にも商業施設の中にブースを借りて出店したことがありました。そのときはリフォーム受注が目的だったのですが、新築も受注したいという欲が出て中途半端な結果に…。
今思えば、地域の特性やリフォームの顧客層に合わせようとしすぎて、自社の理念や強みを見失ってしまっていたのかもしれません。その経験を踏まえて、今度は得意のSE構法による”うちにしかできない家”で勝負しようというわけです。

「過疎化が進む地元をなんとかしたい」

もともと2011年にSE構法に登録したのも、当社ならではの耐雪住宅をつくりたい、という思いからでした。私の地元、十日町市は世界有数の豪雪地帯で、最深積雪は平年でも2mを超えるのが普通。冬場は屋根の雪かきに毎日追われます。
そこで、地元では、傾斜屋根にして家の周囲に雪を落としてしまうか、雪を載せたままで耐える住宅をつくるか、ということになります。私が選んだのは、後者の、雪を載せたままで過ごせる、いわゆる「耐雪住宅」でした。
地元の同業者からは「耐雪住宅なんて当たり前じゃないか。どこの会社でも建てられる」と言われました。でも、地元では壁量計算だけで積雪荷重しか考慮していない。SE構法なら許容応力度計算によって、積雪の負荷の分と地震の負荷の分、両方を考慮した構造が可能になる。これは壁量計算しかしていない地元の競合他社にない強みになります。雪が載った状態での耐震性を確保しているのは、当社だけと言うことです。
そして、自然環境に恵まれている代わりにその厳しさとも共存しなければいけない地元のみんなを守ることができる。雪を載せたままで冬を越せる耐雪住宅なら、雪下ろしの労苦からみんなを解放して、長い冬を安心して暮らすことができる。住む環境を整えることによって、過疎化の進む故郷の街に対して少しでも貢献することになるのではないか。そんな思いがありました。 その翌年、さっそく自宅をSE構法で建てました。もちろん耐雪住宅です。雪から愛車を守るビルトインガレージもSE構法なら柱や梁、耐力壁に妨げられずに確保することができます。当社の標準としている発泡断熱材と合わせ、高気密・高断熱で夏も冬も快適で安心、安全な住まいという理想のモデルとして完成させることができました。
それからは1棟ずつ着実にSE構法による耐雪住宅の実績を増やしていきました。地元では「ちょっと高いけど、いい家」と言われることが多くなりました。よさを認識してもらえるようになって、とても嬉しく思っています。

 

2021年1月10日十日町試験地による積雪深は278㎝となり近年にない豪雪に見舞われた十日町市。

皐工務店本社兼自宅に積もった1mを超える雪。Youtubeで十日町市の空撮を公開しています。

 

十日町市の空撮動画はこちら≫

「登録店の仲間に助けてもらっています」

SE構法登録店10年目の変革のもうひとつは、ある建築家住宅のフランチャイズに加盟したことです。登録建築家の設計力を利用して受注し、当社が施工を担当するというものです。もともと私は大工出身で、現場管理や施工品質には自信がありましたが、その一方、デザイン面を課題としていました。耐雪住宅でひとつの理想を実現できたため、今度は次の課題の克服に取り組もうと思えたのです。
実はこの決断にもSE構法が関係しています。新潟県内の他の登録店と交流が生まれ、経営の悩みなども相談できるようになりました。「設計者を社内でいちから育てるのは時間とお金がかかる」「まずは建築家の設計力を取り入れてはどうか」というアドバイスはとても参考になりました。
経営者は孤独なものです。私が創業者ですから相談すべき先代もいませんし、地元でうかつに愚痴をこぼそうものなら悪い噂がひろがってしまいかねません。でも、同じSE構法の登録店の仲間であれば、立場は同じ。エリアが違う者同士なら、競合することもありません。
むしろ、積極的にお互いの悩みに対して知恵を持ち寄ったり、「そちらの地域で建てたいということなので相談に乗って」とお客様を紹介されたり、施工を依頼されたり。フラットにいい関係を築くことができています。こういう仲間を持てるようになったのも、SE構法を通じて価値観を共有できているおかげなのかもしれません。
一時期は、「安くないと地元では売れないのか」とローコスト住宅に傾きかけたり、思うように増えない見学会の集客に悩んだり、紆余曲折がありました。でも、ようやく10年経って、自分のやるべきこと、自社の方向性が絞れてきたように思います。
やはり自分の根本は大工なのだと思います。基礎から構造までしっかりと理解して、性能と品質の高い家を建てることが、自分のやりたいことであり、自社の目指すべき道。納得のいく施工をしたいので、基礎工事は自社で手がけることにしました。
地元でも「耐雪住宅が欲しい」というニーズが数は少なくとも確実にあるのでそれに応えつつ、長岡市での狭小3階建てを伸ばす。そして建築家住宅のフランチャイズを利用して実績をさらに重ねていく。現場が増えれば次世代の大工や職人を育成する機会も多くなります。当面の目標は、10棟程度を安定受注できるようになること。そうすれば自社大工も育てられる余裕も生まれるはず。今の時代、ひとつの工務店が単独で生き残るのはとてもしんどい。でも、仲間との横のつながりがあれば、複数の視点も情報も得ることができます。いま振り返ってみても、「あのとき、SE構法の登録店になっておいてよかったな」とあらためて思います。

取材:2021年7月10日 文:渡辺圭彦

 


皐工務店株式会社
代表:澤口 茂
設立:2003年
住所:新潟県十日町市上野甲1081
https://satsuki-s.com